廃棄されるモルト粕をクラフト紙に。アップサイクルで地域課題を解決し循環の輪を生み出す

廃棄されるモルト粕をクラフト紙にアップサイクル。「クラフトビールペーパー」が地域課題を解決し循環の輪を生み出す。

 

クラフトビールを製造する際に発生し、大量廃棄されていたモルト粕を再生紙にアップサイクルした「クラフトビールペーパー」。

その汎用性と質の高さから、クラフトビール業界に留まらず、さまざまな業界で活用されている。

その活動は国内だけでなく世界からも注目され、活動の規模を拡大し続ける姿はアップサイクル業界全体の可能性の広がりを感じさせる。

今回は「クラフトビールペーパー」を展開する『株式会社kitafuku』代表・松坂匠記(まつざか しょうき )さんにモルト粕を活用して再生紙を作ろうと考えた経緯や、活動が広がり続けている要因を中心にお話を伺った。

 

二人三脚で「地域の課題」を解決する

――まずは「クラフトビールペーパー」とは何かお伺いできますか?

松坂さん: クラフトビールを製造する工程で廃棄残渣(ざんさ)として出るモルト粕を、紙に混ぜ込んで制作した再生紙で、名刺や飲食店のメニューなど多様な方面に活用していただいています。

 

クラフトビールペーパーを使用して作成した「ギフトボックス」

 

――「クラフトビールペーパー」はご夫婦で経営する『株式会社kitafuku』で行われている事業の一環とのことですが、ぜひ会社についても詳しくお伺いできますか。

松坂さん: 『株式会社kitafuku』は地域の課題を二人三脚で解決するというコンセプトで、現在の拠点である横浜を中心に活動しています。

妻の出身地が北海道、私の出身地が福岡県でございまして、それぞれの都道府県から一文字ずつ取り『kitafuku』という社名にしました。

――企業ロゴがまるで二人三脚しているようなデザインとなっているのはそういった理由からだったのですね。

松坂さん:はい、まさにそうですね。
カラーは緑の大地の北海道、赤い明太子の福岡県と、それぞれの都道府県のイメージから連想しているんです。

ビールの仕込みで大量の廃棄が出る「モルト粕」に着目

―― 「地域の課題を解決する」というコンセプトを掲げている中で、モルト粕に焦点を当てた経緯をお伺いできますか。

松坂さん: 初めは「地域の課題とは何か?」を私達なりに考えた結果フードロスの課題に焦点を当てることにしました。

実態を知るために、お花屋さんやお茶屋さんなど知り合いの店や商店街を回ってフードロスの課題について聞いてまわりました。その訪れたうちのひとつが、クラフトビールを扱う飲食店でした。
そこで月に数十キロのフードロスが発生するというお話だけでなく、クラフトビールの仕込みをすると一度にに何百キロというモルト粕が廃棄されるというお話をお伺いしまして。

―― フードロスもかなりの量ですが、モルト粕の廃棄はそれ以上で驚きました…。

今までもモルト粕を活用したアップサイクルの取り組みが行われてきたそうなのですが、なかなか最善の策が見つからず試行錯誤をされている段階だったようで。

クラフトビール製造所は全国にあり、横浜に限らず全地域の課題であることや、クラフトビールを通じて地域を盛り上げたいブルワリーさんの想いを聞き、 私たちが取り組むべき”地域の課題”だと感じたことから、モルト粕を活用したアップサイクルの可能性を探求していこうと思ったんです。

モルト粕を混ぜて再生紙をつくる難しさ

――そうだったのですね。どのような経緯でモルト粕を再生紙にアップサイクルするアイディアが生まれたのですか?

松坂さん:元々、私達は2人ともシステムエンジニアとしてIT業界で働いていました。

以前勤務していた会社の同僚が「株式会社ペーパル」でフードロスや廃棄される食材を使用して紙をつくるアップサイクル事業に取り組んでいることを思い出して、モルト粕も同様に紙に混ぜることはできないか相談をしたんですよね。

当時、廃棄される米を活用して白い紙をつくる取り組みをされている最中で、モルト粕を活用して茶色い紙をつくってみるのは面白いんじゃないかという話になりまして。
横浜にあるクラフトビールの会社さんにもご協力いただき、株式会社ペーパルさん、弊社の3社合同で取り組みを始めました。

――実際に再生紙を製造するにあたって、印象的だったことはありましたか?

松坂さん: 紙を製造する際の「異物除去」という工程で、製紙会社さんにかなり試行錯誤をしていただいたことですね。クラフトビールペーパーでは紙の製造工程において”異物”と認識されるモルト粕を敢えて混ぜています。

もしも紙を製造する機械が、モルト粕を製造の支障が出る「異物」と検知してしまった場合は機械が止まってしまい、再稼働には膨大な作業とコストがかかるんですよね。
製紙会社さんに異物除去の度合いを下げる(多少の異物は通す)ように試行錯誤していただきました。

製紙会社さんによっては「なんでそんなことを?!」と言われかねないような無理難題にご対応いただき、本当に感謝しかないですね。

たんぱく質や食物繊維が豊富なモルト粕を活用したレトルト「ハマクロカレー」。

クラフトビール業界以外の活用事例が多い“意外な要因”

――  そのような試行錯誤があったのですね…。無事、製造にこぎつけたクラフトビールペーパーですが、現在はどのように活用されることが多いのですか?

松坂さん: 一番活用していただいているのは名刺です。モルト粕ならではの紙の色や質感が、話のきっかけになるとご好評いただいておりますね。

―― たしかに、モルト粕ならではの茶色と肌触りであたたかみがあって、貰った際についつい話題にしたくなります。

松坂さん : ありがとうございます。
クラフトビールペーパーが出来て最初に作ったプロダクトが名刺です。

実は名刺以外のプロダクトは基本的にお客様からのご要望からつくっておりまして。
例えば、飲食店さんのメニュー表やコースターなどで、ありがたいことに日々さまざまなご提案をたくさんの方々からいただいています。

――  お客様からのご要望がきっかけとなりプロダクトが生まれることが多いのですね。横浜付近のクラフトビール会社で広く活用されている印象ですが、その要因はビール製造時にできるモルト粕を活用されているからですか?

松坂さん: たしかに、モルト粕を使用していることがクラフトビール会社で活用していただいている要因の一つとなります。
その他の要因として、横浜が全国で一番クラフトビールの醸造所(ブルワリー)が密集している地域ということもあるように感じています。

実はビール市場のうちクラフトビールの割合はまだ1%程で、特に横浜では関わっている人全体で市場を盛り上げていこうとする機運があるんですよね。
そのため、良いノウハウや取り組みをお互いに共有しあう文化があり、その一環としてクラフトビールペーパーを広げていただいたという背景があります。

――   クラフトビール業界全体の市場拡大に寄与する活動だからこそ、自然と口コミで広がっていたのですね。

松坂さん: これは意外に思われることも多いのですが、紙という汎用性の高さもあって、クラフトビール業界以外でも多く活用していただいていまして。

環境に良いものを使うことへの関心が高まっているという「時代性」や、地域の企業を応援しようという「地域愛」から横浜付近の企業様を中心に活用していただいています。
加えて、嬉しいことに「紙の品質」を評価していただく声も多くいただきますね。

――  そうなのですね。クラフトビールペーパーには6%程のモルト粕を利用しているとHPで拝見しました。他の再生紙では1%程が相場の中でかなり高い割合ですよね。

松坂さん: そうですね。
モルト粕の割合を高めつつ質の高い紙に仕上げるために何度も試作を重ねました。

名刺を実際に使われている方に、「名刺交換をした直後に再生紙だと気づかれることはほとんどない」という感想をいただいた時はとても嬉しかったですね。

活動を加速度的に広げていくためのグローバル展開

――   横浜付近の企業様を中心に活用いただいているというお話でしたが、ぜひ具体的な活用事例をお伺いできますですか?

松坂さん : 最近ですと、プロサッカーチーム横浜FCさんのホームゲームにてクラフトビールペーパーを短冊として利用した、七夕飾りワークショップを開催させていただきました。

――   短冊に使用されたクラフトビールペーパーを通じて、アップサイクルや環境問題について知るきっかけになりそうですね。

松坂さん :  そうですね。
私たちの活動が少しでもアップサイクルや環境問題について知り、考えるきっかけになれたら嬉しいですね。

最近は私達がやれることが増えるにつれ、行政や横浜付近でアップサイクルに取り組まれている他の企業さんともさまざまな取り組みをする機会が増えていまして、徐々に循環の輪が広がっているように感じますね。

七夕飾りワークショップの様子

――今後も次々と活動が拡大していきそうですね。今後、特に力を入れて取り組んでいきたいことをお伺いできますか。

松坂さん: 各地域のクラフトビールを製造している企業や製紙工場が連携して「クラフトビールペーパー」を製造する動きを広げていけたらなと考えています。
事業としてしっかり成り立つものと認識してもらうためにも、まずは活用実績を引き続き増やしていけたらなと。

実は今、海外から「クラフトビールペーパー」を作りたいというお問い合わせもいただいておりまして。
日本で広めていくためにも、まずは海外で実績を作ることも選択肢の一つだと考えています。

――グローバルに展開することで、加速度的に活動が広がっていきそうですね。今後の展開が楽しみです。本日はありがとうございました。

 

 

株式会社kitafuku(きたふく)

〈インタビュアー・文・撮影:菊村夏水 / 企画・編集:青野祐治

 

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